腸内環境を整えるカギは酪酸と発酵性食物繊維!健康を支える食材とは?
私たちの健康を保つために重要とされ、最近話題の「腸内環境」と「腸内細菌」。その中でも、私たちの健康と深く関係しているものとして注目されているのが「酪酸」という短鎖脂肪酸です。
私たちの健康を維持するためには、バランスの取れた食生活が重要です。その中でも特に意識して摂りたい「発酵性食物繊維」と「酪酸」の関係、さらにおススメしたい食材についてもご紹介します。
1.「腸内細菌」と「酪酸」の関係
私たちの大腸や小腸にいる腸内細菌。実は約1,000種類もあり、大きく「善玉菌」「悪玉菌」「日和見菌」の3種類に分けられます。お花畑のように群れをなしているように見えることから、「腸内フローラ」と呼ばれることもあります。「日和見菌」とは、善玉菌が元気な腸では良い働きをし、悪玉菌が元気な腸では悪い働きをすると言われています。
善玉菌には色々な種類の細菌が含まれるのですが、中でも「酪酸菌」だけが、短鎖脂肪酸の一種である「酪酸」を産生することができます。
2. 「酪酸」とは?どんなはたらきをするの?
「酪酸」とは「短鎖脂肪酸」の一種です。『短鎖脂肪酸』とは、大腸で腸内細菌が「発酵性食物繊維」を食べたときにできる代謝物で、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」などを含めた総称です。
「酪酸」には、腸内を弱い酸性状態に保つ機能があるため、悪玉菌の発育を抑える働きがあると言われており、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌が棲みやすい腸内環境に近づけます。ですから、腸内環境を整えるためには、「酪酸」を作り出すことが重要です。
また、「酢酸」「プロピオン酸」「酪酸」などの『短鎖脂肪酸』は、①腸内環境を整える ②代謝をアップする ③体脂肪をつきにくくする ④腸のバリア機能を高め、病原体やアレルゲンの侵入を防ぐ という働きがわかってきており、「健康」や「腸内環境」の最新キーワードとして注目されています。
3.「酪酸」はどのようにつくられるの?
では、「酪酸」を増やすにはどうすればよいでしょうか?「酪酸」を作ることができる「酪酸菌」を食事で摂れば良いのでしょうか。実は、「酪酸菌」を含む食品は、ぬか漬けや臭豆腐といったものしかなく、非常に限られるため、継続的に摂取するのは簡単ではない上に、経口摂取しても胃や小腸で吸収されてしまい大腸までは届かないといわれています。また、酪酸菌だけを増やしても、酪酸菌が大腸で元気に働けなければ、腸内環境はよくなりません。
まず、「酪酸」を含む『短鎖脂肪酸』がどのようにできるのかを見てみましょう。
①短鎖脂肪酸の材料となるのは、食物繊維です。私たちが食べて大腸まで届いた食物繊維は大腸内に存在する「糖化菌」のエサとなり、「糖」が作り出されます。
②次に、その「糖」はビフィズス菌や乳酸菌のエサとなり、「酢酸」や「乳酸」が作り出されます。
③さらに、この「酢酸」や「乳酸」を餌として、「酪酸菌」や「プロピオン酸産生菌」が、短鎖脂肪酸である「酪酸」や「プロピオン酸」を作り出します。
※酢酸は、酢酸そのものが短鎖脂肪酸の一種として働く他、酪酸の材料にもなります。
このように、食物繊維やオリゴ糖などの腸内細菌のエサがスタートになり、様々な種類の腸内細菌がつくりだしたものをリレーのように受け渡して短鎖脂肪酸が作られています。このリレーの途中のどの過程が抜け落ちてしまっても、短鎖脂肪酸を作るリレーを最後まで走りきることができません。
たとえば、食物繊維をたくさん摂ったとしても、ビフィズス菌などの「酢酸産生菌」が腸内にいなければ「酪酸」の材料となる「酢酸」ができず、「短鎖脂肪酸」である「酪酸」は作られない、ということになります。
このように、「酪酸」がつくられるためには、様々な種類の腸内細菌が元気に働くことが重要です。
4.重要なのは菌の多様性を高める「発酵性食物繊維」
様々な種類の腸内細菌に腸内で活躍してもらうにはどうすればよいのでしょうか。腸内細菌の種類を増やすことを「菌の多様性を高める」と言います。
善玉菌を増やそうとして、ヨーグルトや納豆などの発酵食品をとる人が多いですが、実は人によって合う菌・合わない菌があります。また、発酵食品の善玉菌は、食べたときに一時的な効果はありますが、菌そのものが腸内に居座ることは難しいとされています。
菌の多様性を高めるためには、もともと自分のおなかにすんでいる菌たちを元気にして、増やすことが大切です。そのためには、腸内細菌の大好物のエサを摂ることが重要です。腸内細菌の大好物は「発酵性食物繊維」です。腸内細菌のエサとなって発酵するタイプの食物繊維のことで、「水溶性食物繊維」のほぼ全てと、「不溶性食物繊維」の一部がこれにあたります。「発酵性食物繊維」はもともと腸にいる約1000種類もの腸内細菌のエサとなるのです。
実際の腸内には多種多様な腸内細菌が生息し、働いています。特定の菌だけを摂取したり、増やしたりするよりも、様々な食物繊維をバランスよく摂ることでおなかにすむ腸内細菌の多様性を高めてあげることが大切です。
5.「発酵性食物繊維」を多く含む食材は?
発酵性食物繊維を多く含む食材、それはズバリ”大麦“です。
大麦にはもち麦、押し麦、スーパー大麦などの種類がありますが、毎日コンスタントに食べやすいのは”もち麦”です。発酵性(水溶性)食物繊維量は、食物繊維を多く含むとされる根菜類と比べても多く、もち麦ごはん(主食)として食べられるので無理なく続けられます。白米の糖質が気になる方は、もち麦をスープに入れて食べたり、料理に加えたりしてもおいしく食べることができますよ。
データ:もち麦…マルヤナギ小倉屋調べ その他…日本食品標準成分表2020年版(八訂)